「1」によるセラピーの統合

「1」とは、AでもBでもなく、AにもBにもなれる実在だけがある、という。唯一絶対的な言明である。

この言明は、心理学におけるセラピーと密接な関連がある。セラピーでは、例えば「私は死んだ方がいい」などの自己認識の固定を解くことにより、精神疾患を治癒する。

自己認識とは、自分をどう思うか、すなわちアイデンティティ。「自分は〇〇だ」「自分は××じゃない」という分類で作る、自分を含む範囲、つまり境界線のことだ。アイデンティティの境界線固定を解く範囲には、いくつか段階をつけることができる。別にどうわけてもいいんだけど、例えばつぎの四段階を考えることができる。

1. 心〜身体
2. 身体〜地球(人類)
3. 地球(人類)〜宇宙
4. 宇宙の有〜無

多くのセラピーは、1か2の範囲を得意とする。「1」は1から4までを全て網羅し、アイデンティティの境界線を消す。なぜなら、「AでもBでもなく、AにもBにもなれる」ので、どんな境界線に対しても、境界線の中をA、境界線の外をBとすれば、その中と外の区別をつけない「1」のアイデンティティを考えることができるから。「1」のアイデンティティには境界線がない、無境界。当然、AとかBなどと述べることはできない。述べてしまえば、中と外が生まれてしまうからだ。

このように、「1」は、セラピーの目的である、人間がAにもBにもなれると思うような変化のうち、最大の変化を与える。

故に、「1」は、あらゆるセラピーに対して、人間が今ここ変化可能であることの最も基本的な理論的根拠を与え、各セラピーを統合する。