かもめのジョナサン
「そもそも天国などというものは、本当はどこにもないんじゃありませんか?」「その通りだ、ジョナサン、そんなところなどありはせぬ。天国とは、場所ではない。時間でもない。天国とはすなわち、完全なる境地のことなのだから」
(中略)
「よいか、ジョナサン、お前が完全なるスピードに達しえた時なは、お前はまさに天国にとどこうとしておるのだ。そして完全なるスピードというものは、時速千キロで飛ぶことでも、百万キロで飛ぶことでも、また光の速さで飛ぶことでもない。なぜかといえば、どんなに数字が大きくなってもそこには限りがあるからだ。だが、完全なるものは限界をもたぬ。完全なるスピードとは、よいか、それはすなわち、即そこに在る、ということなのだ」
不意にチャンの姿が消えたかと思うと、突然、15メートルほど離れた水際にあらわれた。
(中略)
「神がかりになることはない!」とチャンは言い、そのことを何度もくり返した。
「飛ぶために信心はいらなかったらはずだ。これまでのお前に必要だったのは、飛ぶということを理解することだったではないか。」
(中略)
「そうだ、本当だ!おれは完全なカモメ、無限の可能性をもったカモメとしてここに在る!」
- 作者: リチャードバック,Richard Bach,五木寛之
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/06/26
- メディア: 文庫
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