美しき人々

業の苦しみの先に、業の普遍たるを嘆き、悲しみ、慈悲と慈愛をもって生きる決断をする、その気高きこと。崇高なること。

それは例えば、私を傷つけてしまいたくなるほどに、おまえの尊厳を求めて焦がれる心が、悲しく煌めき、美しく響くように映し出されること。こうべを垂れ、崇敬し、全てをやわらかく包み込みたくなるほどに愛しいと思うこと。おまえは、何も、悪くない。

それは、人間だけが選択できる、業の深さの先。


嘆きの井戸の底で、人は立ち上がる。


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新美南吉童話集 (ハルキ文庫)

新美南吉童話集 (ハルキ文庫)

美智子様が幼きころ支えとし、幾度も思い返したとされる「でんでんむしの かなしみ」等を収めた、新美南吉の童話集。

解説の中で、こんな新美南吉の言葉が紹介されている。

「人といふものは皆窮極に於てエゴイストであるといふことを知るときわれわれは完全な孤独の中に突き落とされる」が、「ここでへばつてはいけない。ここを通り抜けてわれわれは自己犠牲と報ひを求めない愛との築設に努めなければならない。かういふ試練を経て来た後の愛はいかにこの世を住みよいものとすることであらう」

新美南吉 昭和十二年三月一日付の日記より